ヴェーダとは知識という意味です。
具体的にそれはどんな知識なのかというとこの世界の構造について述べられている知識です。そもそもこの世界はどのようにして創られたのか?宇宙とは?人間とは?生命とは?それはあらゆる情報が詰まっている百科事典のようなものなのです。
この世界はどのようにして創られたのでしょうか?物理学では、ビッグバンということで138億年前に無から大きな爆発が起こって、それがどんどん拡大して現在の宇宙になっていると言われています。ですが、ではなぜそのような爆発が起ったのか?は説明できていません。
ところで、一般的な理解として肉眼では見えないが物質の構造には、分子、原子、素粒子というより精密な構造があることが物理学によって明らかにされています。そして素粒子の世界では、クウォークがもっとも細微な粒子として知られています。そして、この世界を動かしている四つの基本的な力とは電磁気力、強い相互作用、弱い相互作用、重力として知られているのですが、まだ統一されて理解できてはいません。そして電磁気力と重力を統一する理論として最先端の理論が超ひも理論であり、その考え方によるともっとも小さな単位は超短い「ひも」のような構造になっているそうです。「ひも」ですから波になったり丸くなれば粒子となったりということで説明されていますが、まだ確定ではありません。
そのひもはとっても小さなもので、原子を太陽系くらいに例えるとそのひもは地球上に生えている木の大きさくらいになるそうです。
さて、一方五千年以上も前からインドに伝承されてきた古代ヴェーダによれば、この世界は振動から作られていると言われています。それを原初音と言ってリクヴェーダの最初の音はアグニミレイプロヒタム・・・・と吟唱されます。音は振動ですから、いわば波です。物理学の理論とも近いものがあるのは興味深いことですね。
人類は、科学というものを発達させて未知なるものを探求し知識を蓄え今日の便利で快適な文明を作り上げてきました。しかし同時に一方では、自然を破壊しそのバランスを崩し新たな脅威を産み出してもいます。地球温暖化などはその最たるものでしょう。
科学を否定するつもりはありませんが、ただそれだけが全てではないでしょう。
科学が始まるずっと以前に古代から伝承されてきたヴェーダというものがあります。その知識の中には、科学的に頷けるものと、まだなんとも言えないものとがありますが、実際に有用なものであれば、とりあえず耳を傾けても良いのではないでしょうか?実際に何千年も継承されてきたものです。もし無価値であったり間違っているものであれば、それほど長くは継承されてこなかったでしょう。何らかの価値があるはずと考えられます。
ヴェーダとはそもそも知識という意味です。
では、それを紐解けば多くの謎が明らかになるのではないか?と私たちは考えるのですが、事はそう簡単ではありません。
古代にはリシと呼ばれる聖者が深く瞑想して自身の意識において真理を悟ったといわれています。ヴェーダも実はそのようにして認知されたものが口伝により子々孫々へと伝承されて行き、ある時から書き記されるようになったものです。このヴェーダ・パンディットの伝統は現代でも維持されており、初代のリシの家系がそのヴェーダの句を継承しているのです。
ヴェーダの知識によれば、知識には、リシ(認識者)・デヴァタ(認識のプロセス)・チャンダス(認識の対象)という三つの構造があり、認識者がある手段を通して対象物を認識したものが知識なのです。知識と言っても何者が、どんな形で対象を認知したものなのか?ということによって違ってくるのです。
現代の教育では、対象に関しての情報が山のように提供されていますが、認識者に関しての情報はあまり教えられていません。我々とは何者で、どこから来てどこに向かっているのか?意識とはなにか?魂とは?考え出すと疑問だらけです。この分野での科学の発展はまだまだでしょう。
話を戻しますと、この認識者が誰かによって、ヴェーダの音の意味も違ってくるのです。
ヴェーダは客観的な調査方法によって発見されたものではありませんが、リシと呼ばれる高度に意識の発達した人たちによって深い瞑想の中で認知され、言葉として伝えれてきたものです。
そのためにヴェーダは振動であるとも言われているのです。その振動を正確に言葉で発するのがヴェーダの吟唱です。つまりそれは正確に発音されなければならないのです。
私たちの言語でもそうですが、例えば日本人が英語を母国語のように発音できるようになるには、やはり子供の時から英語に慣れ、耳と口の訓練が自然に行われる必要があります。
ヴェーダのパンディットも幼少の頃から訓練を受けて、正しい発音ができるようになって初めて価値が出てきます。米国人は、ジャパニーズイングリッシュを聞いてくれますが、自然は果たして不正確なヴェーダの発音を聞いてくれるでしょうか?
さて、そのようにして発見され、リシの子孫たちによって口伝により伝えられてきたヴェーダですが、ある時から紙に書き下ろされて、本となりました。これを4つに分類して、まとめたのが、かの有名なヴェーダ・ヴィヤーサ(BC3000年くらい)という人でした。
実はジョーティシュは、このヴェーダの手足とされるヴェーダンガ(アンガは手足という意味)の一部なのです。
ヴェーダンガは6つありますが、ジョーティシュはその目に当たると言われている知識なのです。それは私たちの肉眼では見えない、時の流れを見通す知識です。
実践的なヴェーダの知識としては、生命の知識として知られるアーユルヴェーダや建築と方位学に関してのスターパティアヴェーダなどが良く知られています。
これらの知識は貴重な人類の遺産と言っても良いでしょう。インドではアーユルヴェーダと西洋医学とを併合した治療なども行わていますし、日本の医師でもその知識を学んでいる人たちも増えているようです。しかし、知識の体系が全く違うので、そのギャップを埋めていくのがたいへんです。
とりあえず我々は、科学的な真偽の判定は別として、有用なものは利用して行きたいと考えています。
ヴェーダウエイ
井岡治彦